キラリ若者 その1
キラリと光っている若者との出会いが数多くあった。その中で私の家に泊まりに来た若者について何回かに分けてご紹介したい。
職場の飲み会があった日だった。午後8時半頃金谷駅に降り立ち、改札口から出た。瞬間、一人の若者が目に飛び込んできた。閑散とした待合室に一人、両足を大きく広げ、頭を低く垂れて、いかにもくたびれたといった様子で座っている。脇には前後輪に荷物をくくり付けた自転車が置いてある。すぐに自転車旅行をしている若者と知れた。私は一旦外に出たが、彼のことが気に掛かってきびすを返した。
声をかける。細面のひ弱そうな若者だ。か細い声が返ってきた。高校1年生だという。友達3人と東京から大阪まで自転車旅行をしているが、2日目の今日、箱根峠を過ぎたところで他の2人とはぐれてしまった。今日は大井川の橋の下で野営する予定だったのでそこまできたが、友達と連絡が取れないままでいる。まだ携帯電話が普及していない15年前のことである。はぐれたときは近くの駅で合流する約束になっているというので、金谷駅で友達を待っているところだった。
随分焦燥しきっている表情だったので、私は彼に言った。
「友達と合流することができたら、おじさんの所に電話しなさい。よかったら私の家に泊まりにおいで。」
私はそう言ってタクシーで帰宅した。ほどなく彼から電話がかかってきた。友達と合流できたという。そして泊めて欲しいと。私は妻に運転させ、再び金谷駅に向った。駅にいた高校生A君だけ車に乗せ、余力がありそうな他の2人は牧之原の坂を自力で上らせ、私の家に案内した。
東京学芸大学附属高校の1年生、自転車競技部の生徒だった。春休みを利用して長距離ツーリングをしていたのだった。実はA君は体力があまりないだけでなく、やることがとても鈍くさい、いつもひとりぼっちでいるような生徒だった。そんなA君を、東京・大阪間500㎞にわたる過酷なツーリングに誘ったのが他の2人の仲間だった。A君に自信をつけてもらいたい、元気な明るい高校生になってほしい、そんな思いがあった。遅い夕ご飯を彼らに食べさせた。食べながら、他の2人がぼそぼそとA君を気遣いながら話してくれた。
※続きは その2に
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