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お年寄りと一緒に楽しむ

年に数回講演を頼まれる。主にお年寄りの集まりの会からである。

先頃、今年最初のそれをやった。市内旭町の”健康サロン”からの依頼だった。
「音楽を交えながらのお話でお年寄りを楽しませてほしい」という依頼主の要望を受け、持ち時間90分の講演の準備をして臨む。

当日、開始30分前に会場に着くと、既に椅子がほとんど埋まっていた。持参したギターと譜面台、打楽器のプロパノータやハーモニカなどを出したり、話の中で使う写真を準備したり、会の代表者と打ち合わせをしたりといった時間をとるために早めに行ったのだが、どこの会場もお年寄りは早めに来るものである。皆さん注視の中、私と妻はそそくさと準備に動いた。

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皆さんの前に立っ。視線が降り注ぐ。この人誰だろう、どんな話をするのだろう・・・。そんなことを言っている目だ。私はこの瞬間が好きである。緊張の瞬間だけれど、楽しみに待っていたよ、早くお話ししてという風にも受け取れる皆さんの視線と居住まいを正す姿に感動するからだ。激動の昭和を生き抜き、人生経験を積み上げたお年寄りならではの姿である。だからこそ私は、お年寄りの前に立つときは「長幼の序」なる精神で臨む。敬意の心を持って話を始める。

”若返りマジック~! あぶだらかぶだら~、ワン・ツー・スリー!はい、皆さんは変身しましたぁ~!”
「あなたはお幾つですか?」
85歳位の女性に聞く。
「20歳。」と恥ずかしそうにつぶやく。
次々と聞いていくと、28歳、31歳、19歳と応えるお年寄りたち。唯一の男性に聞くと、「わしゃあ72歳だよ。」と応える。もっと若くなってみましょうかと言うと。「それでも20歳若返らせたよ。」と笑顔で言った。

瀬戸市の陶芸家加藤錦三氏から毎年いただく年賀状の話をした。
「まだ88歳です。情熱を持って粘土に向かっています。」
「今年は90歳になります。まだまだ作陶に燃えています。」

実年齢を感じさせない制作意欲はどこから来るのか。一つには、"まだ”という心持ちがあるからだろう。
そんな話をして”若返りマジック”をかけたのだが、お年寄りたちはそれに乗ってくれて、見事に若返った。

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そしてハーモニカ伴奏で皆さんに歌ってもらったのが、青春を謳歌した歌である。

”若く明るい歌声に~青い山脈雪割り桜~“
”汽車の窓から ハンケチ振れば 牧場の乙女が花束投げる~高原列車はラララララ行くよ”
”丘を越えて行こよ~讃えよ我が春を~”

明るい元気な歌声がホールに響いた。

ハーモニカを吹きながら、72歳に若返った男性がポツリと言った言葉を反芻していた。
「(鉄砲を構える格好をして)青春なんてなかったなあ。」

ここにいるお年寄りの多くが、10~20代の青春期に戦争を体験しただろう。

さあ、若返った今日は、存分に青春を讃えてください!
ハーモニカに吹き込む息が力強くなった。

瀬戸内海に人口20人に満たない小さな島がある。志々島に行った時に出会った84歳(当時)の老婆の話。
一人暮らしの彼女は、瀬戸内海と小島が見渡せる小高い丘に、3年がかりで一人コツコツと芝桜を植えた。”天空のお花畑”と大書された看板が立つ。杖に頼ってはいるが、丘のてっぺんまで歩き上る足取りは軽快だった。ピンクや白、青で埋め尽くされた丘に毎朝歩き来て、花を愛で海を眺めるのが生きる糧と話していた。

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その写真を皆さんに見せた。ほー!と声が上がった。

プロパンガスボンベで作った楽器、プロパノータで「少年時代」「五木の子守歌」「見上げてごらん夜の星を」などを演奏したり、懐かしの映画音楽「夜霧の忍び会い」などをギターでつま弾いた。
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歳を重ね古希になった私。最近まで思いもしなかったことをやるようになった。若い頃は尚更だったが、還暦を迎えてもやらなかったことをだ。それは己に感謝するということだ。他者には「ありがとう」とたくさん言ってきたものの、自分に向けて「ありがとう」と言ったことがない。いや、思いもしなかった。

浴槽に体を預けながら足指や足裏を揉む。「指さん、足裏さん一日僕を支えあっちへこっちへと動いてくれてありがとう!」
床に就き、寝付かれない時にも言う。頭から足先まで順に「ありがとう!」と言う。それでも眠気が来なければ内臓にも感謝する。
心臓さんありがとう。肺くんありがとう、腎臓くん、大腸さん・・・。いつの間にか夢の中へ。

ありがとうは言葉の王様なのですね。

講演の締めの言葉である。

旭町健康サロンの世話係の方が感想を言ってくれた。
飽きてくると私語が出ることがあるけれど最後までそれがなかったこと、ほんわかとした気持ちにさせられました、と。

準備は少し苦労だったが、社会貢献の一助ができる喜びと、大勢の前で話すこと演奏することを私自身が楽しむこと、その心持ちが肩を張らない和やかな講演になったのかもしれない。


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コメント

ご夫婦の在り方その物が映し出されている。そんなゆったりとした、優しい思いのサロンとなりました。ありがとうございました。まだまだ若いと思いながらも、事あるごとに、自分への言い訳としていたようです。「若返りの術」のエネルギーを頂いて、余裕のあるサロンの一員となれるようにと思っています。芸術家の方々はいろいろな-知識や力量をお持ちですが、この方もかと実感したところです。今年のささやき窯の公開日には伺いたいものです。

投稿: 鈴木 敏子 | 2020年2月 3日 (月) 22時40分

>鈴木 敏子さん
>
>ご夫婦の在り方その物が映し出されている。そんなゆったりとした、優しい思いのサロンとなりました。ありがとうございました。まだまだ若いと思いながらも、事あるごとに、自分への言い訳としていたようです。「若返りの術」のエネルギーを頂いて、余裕のあるサロンの一員となれるようにと思っています。芸術家の方々はいろいろな-知識や力量をお持ちですが、この方もかと実感したところです。今年のささやき窯の公開日には伺いたいものです。

ささやき窯 ヒロより

コメントありがとうございます。

講演の機会をいただき、鈴木さんはじめ、スタッフの皆様に感謝いたします。

投稿: Hiro(村松博義) | 2020年2月 6日 (木) 20時21分

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